スズメバチの蜂の子

蜂の子はすべての蜂の幼虫、蛹、かえったばかりの若蜂などが食べられます。しかし、蜂の子と言えば、ほとんどの地域でスズメバチの蜂の子が食べられています。今回は、なぜスズメバチの蜂の子なのかについてご説明します。

大きな蜂の子

スズメバチは、生息地域によって種類は異なりますが、クロスズメバチやオオスズメバチなどの身体の大きい種類がメインとなります。小さく痩せた蜂では調理もしにくく、栄養も充分に含まれていません。食用とするためにはボリュームがあることは重要なことです。スズメバチの蜂の子の唾液や成虫の毒には優れた効能があり、ボリュームだけではなく栄養成分も豊富に含まれています。

巣が大きい

蜂の子はすべて食用にできますが、日本の気候や捕食する昆虫の生態系の影響から食用とするのが難しいこともあります。例えば、比較的におとなしい性格で一段の巣しか作らないアシナガバチは、外部からの攻撃により飛散、または、餌を求めて広い地域に拡散して大規模な巣を形成するのが難しく、1つの巣にわずか数十匹の働きバチしかいないということがあります。多くのスズメバチは大きな巣を作りますので、巣の中の蜂の子の数も多くなります。収穫量の多さも重要なことです。

労力に見合った収穫量

蜂の収穫は営巣場所となりやすい場所や飛翔経路を観察し、巣の場所を予測して探す方法と罠を仕掛けて餌を運ぶ蜂を追跡する方法があります。罠は視認性を高めるために綿を付けた餌を蜂にくわえさせて、その後を追って巣を探します。餌の大きさも対象のハチが運べる大きさにしなければなりませんので、経験が必要です。追跡による収穫方法は地理的な条件等で難しくなっていますが、いずれの方法にしても時間や労力がかかりますので、それに見合った収穫量が得られる大きな巣を作る種類のスズメバチが対象とされます。

栄養豊富な蜂の子の唾液

スズメバチの成虫の餌は、主に成熟しつつある幼虫の唾液腺から分泌される栄養液です。糖分やタンパク質が豊富に含まれ、人の乳に近い組成を持っています。成虫が採集した餌を巣に運んで幼虫に与えながら、幼虫から栄養液をもらっているのです。栄養液は蜂の重要なエネルギー源となっており、幼虫が充分に成長していない場合は、糖質の多い花の蜜や樹液で補います。しかし、餌が不足する場合は、幼虫を食料とすることもあります。それだけ高い栄養を含んでいるということです。

すべての蜂の子が食べられますが、スズメバチの蜂の子や巣は食用としてのボリュームと豊富な栄養を兼ね備えています。栄養価の高さは、調理法のバリエーションも広げています。