昆虫食としての蜂の子

現代人にとって昆虫を食べることは、かなり抵抗感のあるものです。しかし、日本でも地域によっては郷土料理となっており、広く親しまれています。今回は、昆虫食としての蜂の子について見てみましょう。

世界の昆虫食

昆虫食は約150万年前に東アフリカで食べられていたという最古の記録があるように、古代より世界各地で行われています。アジア約29か国、南北アメリカ約23か国、アフリカ約36か国、約20億人の人が1900種類以上の昆虫を食べているといわれています。カメムシやハエ、ゴキブリ、ムカデ、クモ、ダニなどといった目にするのも遠慮したいほどの昆虫まで食べられています。生活が豊かな地域や文化・宗教面から昆虫食は減少していましたが、将来的な食糧危機を考慮した場合、少ない飼料で飼育できて環境にも優しい昆虫食を見直すべきとする動きも出ています。蛹や幼虫が食用とされることが多く、タンパク質やミネラルが豊富で、加熱すれば衛生的にも問題はありません。しかも、エネルギー変換効率も約40%と高く、他の食材の3~4倍ほどもあります。

日本の昆虫食

日本では長野県、岐阜県、愛知県、静岡県、山梨県、栃木県、岡山県、宮崎県などの山間部を中心に各地で見られます。蜂の子、イナゴ、ざざむしなどが主です。記録に残る昆虫食は江戸時代以降です。庶民が頻繁に口にしていた昆虫は、イナゴ、スズメバチ類の幼虫、タガメ、ゲンゴロウ、ボクトウガ、カミキリムシの幼虫、ブドウスカシバの幼虫など約55種類。煮たり焼いたり漬けたり、すりつぶしたりなど様々な調理法で食べられていました。その後、第2次世界大戦中の食糧難の時代にイナゴやカイコの幼虫など一部の昆虫が食べられるようになりましたが、昆虫食は衰退して一部の地域に残るだけとなっています。

蜂の子

昆虫食が衰退する中でも、蜂の子は薬品としても世界各地で使われており、栄養価の高い健康食として食べられています。タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪酸などを含み、とくに体内で合成できない必須アミノ酸までも含まれていることが判明すると、蜂の子についての研究も盛んに行われるようになりました。同じ蜂製品のハチミツやローヤルゼリー、プロポリスと同様に健康や美容への有用性の高い食品として研究がすすめられ、用途拡大の可能性を秘めています。

日本では衰退傾向の昆虫食は、未来の食糧危機を救う救世主として注目されています。栄養の高さから蜂の子はいまだに全国各地に根強く残り、その可能性についての研究が進められています。現在では健康食品として徐々に広がりつつあります。